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米朝首脳会談 アジア極東における新たな激変の始まり

 先週の米朝首脳会談について、国内外の(とりわけわが国内の)マスコミは、トランプ大統領のあまりの寛大さにあっけに取られ、
 「完全非核化といっても何ら具体的なプロセスがない」とか、
 「また騙されるだけではないか」とか、
 「トランプは取引上手だというが実は大馬鹿じゃないか」とか言って、総スカンを食わせている。

 そしてキム委員長を狂喜させた(記者会見では「まるでSF映画を見ているようだ」とまで口走っていた)、一方的な「北の体制維持への保障」も、当然すこぶる評判が悪い。
 
 そのうえ会談後の記者会見でトランプ氏が米韓合同軍事演習の中止と、在韓米軍の撤収にまで踏み込んだことで、我が国の外交専門家とマスコミは、
 「すわ安全保障上の一大事だ」
、「米軍にはどうしても極東に駐留し続けていただかなければならない」と、懸命にキャンペーンを張っている。
 だけど、トランプ大統領の言ってることは極めてシンプルで分かりやすい、まっとうなことではないか。
 
 「私は選挙中ずっと言ってきたように、在韓の我が国の兵士を帰還させてあげたい。それに演習は金がかかるし、駐留はもっと金がかかる」
 「北の復興資金は、日・韓・中が負担する。アメリカは1セントも出さない。アメリカはこれ以上アジア極東にお金をかけない。アジアはアジアでやってほしい。アメリカは世界中に関わりすぎた。これからはアメリカ(国内)ファーストで行きたい」
 これほどわかりやすい言説を過去の大統領のだれが一体できたであろう?
 これは単に経営者だからケチで言っているだけでない。
 これはこれで一つの立派なイデオロギーなのだ。
 
 米朝首脳会談の直前、安倍首相は今年二回目となる米日首脳会談を急遽申し入れ、米朝会談で我が国最大の懸案・拉致問題を提起するようトランプ大統領に直々に懇願し、その熱意にほだされたという形で、大統領は米朝会談でキム委員長に対して複数回拉致問題を話題にしたということだが、その文脈はあくまで、
 「日本から金を引っ張り出すためには安倍に会ってやったほうがいいよ。そのためには安倍の顔を立てて拉致について何らかの答えを用意したほうがいい」というものだったと伝えられている。
 そして安倍首相には電話で
 「ちゃんと伝えておいたから後は自分で直接やってくれ」といったらしい。
 それを受けてか安倍首相は
 「拉致問題は今後、私が直接キム委員長にお会いし、私自ら解決する」と例の通り、ごく当たり前のことを、妙にヒロイックな芝居がかった口調でしゃべっている。
 そして早くも経済支援1000億ドル(10兆円)という数字まで独り歩きしている。
 
 拉致問題を含む日朝間の問題の解決に10兆円が高いか安いか見方は色々だろうが、それと並んで、あるいはそれ以上に我が国のこれからの運命にとって大きな意味を持ってくるのは、在韓米軍撤退問題だ。なぜなら、「アメリカ・ファースト」のイデオロギーからすれば、この次にやってくるのは確実に、在日米軍の縮小・撤退問題だからである。
 我が国のマスコミをはじめ、いやマスコミだけDなく政・官・財上層のいわゆるエスタブリッシュメントの人たちほぼ全員が
 「そんなこと有りうるわけがないし、いや絶対有ってはならない。考えるだにおぞましい、恐ろしさに体が震える」問題なのだ。
 しかしこの在日米軍縮小・撤退はトランプ政権下では遅かれ早かれ確実にやってくる。
 エスタブリッシュメントの方々からすれば、できる限り早くトランプ政権が倒れてくれることを切望するということだけだろう。
 
 実は「アメリカ・ファースト」を掲げているトランプ大統領の戦っている主要な敵は、アメリカ国内の覇権主義者(軍産複合体)だという見方がある。
 外交問題の分析を得意とするフリーのジャーナリスト田中宇(たなかさかい)氏らの見方だ。
 興味のある人は田中氏のニュースレターの会員になられるのをお勧めします。
 
 今日は専門のジャーナリストでもなく、もちろん評論家でもない一介の経営者でしかない私が生意気にも米朝問題、日朝問題を論じてだいぶ顰蹙を買っているが、企業経営者として考えれば10兆円の負担は確実に私たちの上に増税(特別負担金とか)としてのしかかってくるに違いない。その分我が国力は確実に削がれるのだ。
 しかしそれ以上に、これからの企業経営に長期にわたって大きな影響を与えるだろう問題は、極東におけるアメリカのプレゼンスの後退と中国のの台頭であろう。
 そしてまたキム委員長と共に有力なノーベル平和賞候補になった左翼のムン・ジェイン大統領のもとで韓国では、強烈な対日ナショナリズムが再び燃え盛るであろうし、それに対抗して我が国内では、いっそうネトウヨ・ナショナリズムが盛り上がるだろうと予想される。
 企業経営者としては、言うまでもなく、右翼にも左翼にも決して偏ることなくこれからの激動を何とか耐え抜く方策が必要だろう。
 大きな節目の時代がやってきている。
 
 余談だが、トランプ氏の娘婿のクシュナー氏が実は昨年の夏からこの米朝会談の根回しをやっていた(FTの特ダネ)らしい。そしてクシュナー氏が実に北の西海岸の保養地を開発してカジノを作る計画を立案し、それをトランプ氏がキム委員長に伝えたところキム氏が「SFを見ているようだ」と喜んだという。
 トランプ大統領はヴェガスのカジノの胴元とは刎頸の仲なのだ。我が安倍首相がIR法案とやらを急がされたのもそういう背景があってのことだという。

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