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ノーベル賞作家 カズオ・イシグロの「私を離さないで」

 カズオ・イシグロがノーベル文学賞をとった。
 よく知られているようにイシグロは戦後日本生まれだが5歳のとき英国に移住し英国籍をとり英語を母国語として英語で小説家になった人だ。

 私は、カズオ・イシグロには10年ほど前に「私を離さないで」という作品で大変感銘を受けたことがある。
 題名とは裏腹に大変シビアな内容で、臓器移植のためにのみクローン人間として産み出され育てられてきた少年少女たちの逼迫した青春と短い成熟を描いた傑作だった。
 たまたま私たちORTの最高顧問をしていただいている野本亀久雄先生が「(社)日本臓器移植ネットワーク」の(前)理事長でもあって、私たちORTも専門外ながら移植には日頃から格別関心を抱いている。私自身このブログに過去何度か臓器移植(と野本先生)のことを書かせていただいててもいるのだが、移植に限らずこういう最先端医療には常にある種の「危うさ」が付きまとっている。
 この微妙な危うさを繊細な感性と大胆な想像力で物語世界に展開していって「私を離さないで」のような大傑作ができたと思われた。
 確かに「私を、、、」の作中の不気味さ、逼迫感はジョージ・オーエルの「1984」に通暁するものがある。そういえば、作中に時々漂う叙情性や乾いたユーモアもオーエルに見られるものだ。また別役実の最初期の作品(たとえば「カンガルー」)などにも共通の。
 たとえば、主人公の少年少女たちが、そのうちの一人の少女の遺伝子上の母であるかも知れない女性に会いに行き挫折し帰る途中、立ち寄った浜辺で打ち捨てられた廃船と出会うシーンの乾いた美しさは何物にも喩えようがない。
 この「私を、、、」の映画化されたものを私は数年前台湾出張の短いフライトの中で見たが、こちらもとてもいい出来だったと思う。

 

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